2-phase hybrid stepper solver

ステッピングモータ選定シミュレータ

Nidec KV42 preset

ベクトル

0.000 s

モデルレビュー

INFO

時間応答

全体

波形上を横方向にドラッグすると時間軸を拡大できます。ホイールでも拡大/縮小できます。速度・追従誤差・電流・トルクは、瞬時値、移動平均、RMS、定常化後の値を表示/非表示で比較できます。

速度-トルク運転点

full-step kpps
選択中: 自動
手動点は未入力です。x列は現在のグラフ横軸として扱います。rpmfull_ppsinput_ppskpps も使えます。

曲線を入れていない場合も、過渡中の必要トルクをフルステップ相当kpps上に表示します。曲線入力時は、入力曲線、過渡軌跡、指令速度必要点、曲線上限@指令速度、定常評価点/終端評価点を重ねます。「強調する代表点」で、どの点を主に読むかを選べます。

ステップサンプル

t [ms] cmd pulse rpm err [step] Ia [A] Ib [A] Tavg [N m]

使い方

入力 → 曲線 → 負荷 → 判定

この画面は、ステッピングモータを選ぶ初期段階で「速度、負荷、電源電圧、ドライバICの組み合わせが無理のない範囲にあるか」を見るためのものです。最初はプリセットで動かし、負荷計算と速度-トルク曲線を足していくと、実機に近い見方になります。

1

モータとICを選ぶ

モータプリセット、ドライバIC、電源電圧、電流制限を選びます。代表値は初期検討用です。型番が決まっている場合は、巻線抵抗、インダクタンス、保持トルク、ロータ慣性をデータシート値に置き換えます。

2

速度をrpmで決める

目標速度をrpmで入れると、STEP入力PPSは基本ステップ角とマイクロステップから自動換算されます。カタログ曲線を見るときは、STEP入力PPSではなくフルステップ相当PPSで読むことが多いです。

3

負荷を入れる

負荷トルク、負荷慣性、ギヤ比、効率を入れます。数値の見当がつかない場合は「負荷計算」タブでベルト、タイミングベルト、ボールねじの計算からシミュレータへ反映します。

4

速度-トルク曲線を重ねる

カタログ曲線や実測曲線をJSON/CSVで貼り付けます。曲線は限界包絡として使います。グラフでは、入力曲線、過渡軌跡、指令速度必要点、曲線上限@指令速度、定常評価点/終端評価点を分けて表示します。強調する代表点はドロップダウンで選べます。

5

代表値カードを見る

最終速度、追従誤差、負荷角、トルク余裕、電流誤差、PWM/PPS、逆起電力余裕、熱を見ます。各カードの「?」を押すと、意味、式、読み方が出ます。

6

危ない理由を分ける

トルク不足なのか、電流が追従していないのか、逆起電力が大きいのか、チョッパ/PPS比が低いのかを分けて見ます。速度、電源電圧、電流制限、モータL/R、負荷慣性のどれを触るべきかが見えます。

最初に確認する場所

  1. 速度: 目標rpmに到達しているか。
  2. 追従誤差と負荷角: 同期余裕があるか。
  3. トルク余裕: 必要トルクに対して上限トルクが足りているか。
  4. 相電流RMSとerr: 電流制限に対して目標波形へ追従できているか。
  5. 逆起電力余裕: 高速域で電源電圧に詰まっていないか。
  6. 簡易熱: ドライバの放熱が無理な条件になっていないか。

速度-トルク運転点の見方

指令速度必要点は、入力した指令速度と必要トルクの組み合わせです。これは「狙っている速度で、これだけのトルクが必要」という要求点です。

曲線上限@指令速度は、同じ指令速度で速度-トルク曲線から読んだ上限トルクです。必要点ではなく、トルク余裕の分子になります。

定常評価点は、定常評価区間の平均速度と定常必要トルクの組み合わせです。同期して定常に入った条件では、この点を主に見ます。

終端評価点は、計算終了時の速度と必要トルクです。加速未完了や脱調時の参考点です。グラフ上の「強調する代表点」でどれを主表示するか選べます。

CSV入力の例

pps,torque_nm,label
0,0.80,holding
500,0.72,low
1000,0.58,mid
2000,0.34,high

pps とだけ書いた場合は、カタログ曲線としてフルステップ相当PPSで扱います。実測ログのSTEP入力PPSなら、曲線のPPS基準を「現在のSTEP入力PPS」に切り替えます。

よくある調整

高速で電流誤差と逆起電力が大きい場合は、電源電圧を上げる、低インダクタンスのモータに変える、目標速度を下げる方向が効きます。

低速でも追従誤差と負荷角が大きい場合は、負荷トルク、加速条件、負荷慣性、電流制限、モータサイズを見直します。

負荷計算ワークシート

直動負荷の選定計算です。ベルト/プーリ、タイミングベルト、ボールねじを切り替え、FTLTa、必要トルク、余裕率、慣性比を確認します。速度を基準にし、PPSはマイクロステップ設定から自動換算します。

入力

加速時間指定は台形加速の条件が分かる場合に使います。自起動/f²式は、立ち上がり時間を置かない概算です。ボールねじでは予圧荷重と予圧摩擦を別項で扱います。減速段がある場合は減速比 iとギア効率を入れると、速度×i・トルク÷(i·η_G)・慣性÷i²でモータ軸へ換算します(反映時にシミュレータの減速比も更新されます)。比較モータトルクは0のままにすると、曲線または現在のモータ条件から自動で概算します。

項目式/意味

機構の図解

100%

トルク換算に使う寸法を示します。

運転パターン

搬送速度と加速時間から作る簡易速度パターン。

記号の意味

計算例

計算方法

物理モデル / 前提条件 / 選定ロジック

このシミュレータの目的

ステッピングモータの選定では、保持トルクだけを見ても判断できません。実際に問題になるのは、速度が上がったときの電流追従、逆起電力、負荷角、加速トルク、負荷慣性、ドライバの電流・電圧・熱余裕です。

このシミュレータは、2相ハイブリッドステッピングモータを電気系と機械系に分けて計算し、選定時に見たい量を同じ画面に並べます。目的は「最終設計を保証すること」ではなく、「無理な組み合わせを早めに見つけること」と「どの物理量が支配的かを分けること」です。

式の読み方

このページの式はLaTeX形式でも読めるようにしています。読み込み環境でMathJaxが使える場合は数式として表示され、使えない場合も元の式がそのまま読めます。

\[ T_{margin}=\frac{T_{available}(v)}{T_{required}} \]

1. まずrpmを基準にする

ユーザーが決めたいのは、通常はモータまたは出力軸の回転速度です。そのため、計算では目標速度をrpmで持ち、STEP入力PPSは従属値として換算します。

\[ N_s = \frac{360}{\theta_{step}} \]
\[ f_{in} = \frac{n N_s M}{60} \]

1.8°モータなら stepsPerRev = 200 です。60 rpm、1/16マイクロステップでは、フルステップ相当PPSは200 pps、STEP入力PPSは3200 ppsになります。

2. フルステップ相当PPSとSTEP入力PPS

速度-トルク曲線の横軸が pps と書かれていても、それがフルステップ相当PPSなのか、マイクロステップ後のSTEP入力PPSなのかで意味が変わります。

カタログ曲線はフルステップ相当のパルス速度で示されることが多いため、単に pps とだけ書かれた曲線はフルステップ相当PPSとして扱います。

\[ f_{full}=\frac{f_{in}}{M} \]
\[ f_{in}=f_{full}M \]

3. 指令電流ベクトル

マイクロステップでは、A相とB相の電流指令を正弦波状に動かします。理想的には、固定子の磁界ベクトルが滑らかに回転します。

\[ \phi=\frac{N_{pulse}\pi}{2M} \]
\[ I_{A,ref}=I_{cmd}\cos\phi \]
\[ I_{B,ref}=I_{cmd}\sin\phi \]

実際の相電流は巻線インダクタンス、電源電圧、逆起電力、チョッパ制御の都合で、この指令に遅れて追従します。

4. 巻線の電気モデル

各相の巻線は、抵抗RとインダクタンスLを持つ電気回路として扱います。ロータが回転すると逆起電力が発生し、電流を増やすために使える電圧が減ります。

\[ L\frac{dI}{dt}=V_{drive}-RI-E_{bemf} \]
\[ E_{bemf}\approx K_e\omega \]

高速になるほど BEMF が大きくなり、同じ電源電圧でも電流が上がりにくくなります。これが高速域でトルクが落ちる主な理由の一つです。

5. チョッパ電流制御の近似

実際のドライバはPWMチョッパで巻線電流を制御します。PWM周期内の細かい鋸歯状リップルをすべて解くと重くなるため、このシミュレータではPWM周期内平均の電流変化として扱います。

\[ \left(\frac{dI}{dt}\right)_{cmd}=(I_{ref}-I)f_{ctrl} \]
\[ \left(\frac{dI}{dt}\right)_{rise,max}=\frac{V_{M,eff}-RI-E_{bemf}}{L} \]
\[ \left(\frac{dI}{dt}\right)_{fall,max}=\frac{-V_{M,eff}k_{decay}-RI-E_{bemf}}{L} \]
\[ \frac{dI}{dt}=\mathrm{clamp}\left(\left(\frac{dI}{dt}\right)_{cmd},\left(\frac{dI}{dt}\right)_{fall,max},\left(\frac{dI}{dt}\right)_{rise,max}\right) \]

decayモード、Smart Tune、SpreadCycle、StealthChopなどの違いは、帯域、電圧利用率、減衰方向の効き方の違いとして代表化しています。

6. トルク定数Ktの置き方

2相ステッピングモータの保持トルクは、2相励磁時のベクトル合成トルクとして示されることが多いです。そのため、単純に holdingTorque / ratedCurrent とするとトルクを大きめに見積もることがあります。

このモデルでは正弦波2相駆動に合わせて、次の近似を使います。

\[ K_t=\frac{T_{hold}}{\sqrt{2}I_{rated}} \]

電流制限を定格より下げると、低速で使えるトルクもほぼ比例して下がります。

7. q軸電流からトルクを求める

トルクに効くのは、ロータ磁束に対して直交する成分の電流です。A相/B相の電流を、ロータ電気角に対するq軸成分へ変換します。

\[ \theta_e=N_r\theta \]
\[ I_q=-I_A\sin\theta_e+I_B\cos\theta_e \]
\[ T_{em}=K_tI_qS_{sat} \]

定格を大きく超える電流では磁気飽和を簡易的に入れています。飽和の詳細はモータごとに違うため、ここは安全側の目安です。

8. ディテントトルクと振動

無励磁でもロータが特定位置に吸い込まれる力があり、これをディテントトルクと呼びます。波形上は周期的な外乱トルクとして入れます。

\[ T_{detent}=-T_d\sin(4\theta_e) \]

これにより、低速時の細かな速度リップルやトルクリップルが出ます。実機の共振谷を完全に再現するものではありませんが、滑らかすぎる理想モデルにならないようにしています。

9. 機械系の運動方程式

ロータと負荷をモータ軸へ換算し、トルクの差から角加速度を求めます。

\[ J_{total}\frac{d\omega}{dt}=T_{motor}-T_{load}-B_{total}\omega \]
\[ J_{total}=J_{rotor}+\frac{J_{load,out}}{G^2} \]
\[ B_{total}=B_{motor}+\frac{B_{load,out}}{G^2} \]

ギヤ比を入れた場合、負荷慣性はギヤ比の2乗で小さく見えます。一方、出力側負荷トルクはギヤ比と効率でモータ軸へ換算されます。

10. 負荷トルクの換算

出力側で必要なトルクを、モータ軸に戻して計算します。

\[ T_{load,motor}=\frac{T_{load,out}}{G\eta} \]

負荷計算タブでベルトやボールねじから求めた値を反映する場合も、最終的にはモータ軸の負荷トルク、負荷慣性、目標rpmへ変換してシミュレータに入れます。

11. ベルト / プーリの負荷計算

水平または傾斜した直動負荷では、運動方向荷重をまず求めます。

\[ F=F_A+mg(\sin\alpha+\mu\cos\alpha) \]

プーリ径D、効率ηの場合、負荷トルクと直動質量の慣性換算は次の通りです。

\[ T_L=\frac{FD}{2\eta} \]
\[ J_{linear}=m\left(\frac{D}{2}\right)^2 \]
\[ n_{rps}=\frac{v}{\pi D} \]

12. ボールねじの負荷計算

ボールねじでは、リード PB が1回転あたりの直線移動量です。上昇方向の荷重、効率、予圧摩擦を含めて負荷トルクを見ます。

\[ T_L=\frac{F P_B}{2\pi\eta}+\frac{\mu_0F_0P_B}{2\pi} \]
\[ J_{linear}=m\left(\frac{P_B}{2\pi}\right)^2 \]
\[ n_{rps}=\frac{v}{P_B} \]

垂直軸では下降時、無励磁保持、ブレーキ要否が別問題になります。この画面では上昇方向の駆動トルクを主に見ます。

13. 加速トルク

加速に必要なトルクは、総慣性と角加速度で決まります。加速時間が分かる場合はこちらを使います。

\[ T_a=J_{total}\alpha \]

加速時間が分からない概算では、自起動/f²式を使えます。

\[ T_a=J_{total}\theta_{step}f^2 \]

ここで f はフルステップ相当PPSです。マイクロステップ後のSTEP入力PPSをそのまま入れないようにします。

14. 必要トルクと安全率

負荷トルクと加速トルクを足し、安全率をかけます。

\[ T_M=(T_L+T_a)S_f \]

速度-トルク曲線と比較するときは、横軸が指令速度、縦軸がこの必要トルクになります。この点は「目標点」というより「指令速度で要求される点」です。曲線上限は「使えるトルク」、必要トルクは「必要なトルク」です。両者を同じ点として描くと意味が混ざるため、グラフでは分けて表示します。

15. 速度-トルク曲線の扱い

読み込んだ速度-トルク曲線は、時間で揺れる瞬時トルクではなく、速度に対する定常限界包絡として扱います。

既定では、時間積分中の電磁トルクを曲線でクリップしません。これは、巻線L/R、電源電圧、逆起電力による高速側のトルク低下を、すでに電流モデル側で計算しているためです。

曲線クリップをONにすると、外部曲線を安全側の上限として瞬時トルクにかけます。カタログ曲線を保守的な包絡として強く使いたい場合の設定です。

16. 運転点グラフの点の意味

過渡運転軌跡は、シミュレーション中に通った速度と必要トルクの履歴です。

指令速度必要点は、指令速度と必要トルクの組み合わせです。これは制御上の目標速度に対する要求点であり、曲線の上限点ではありません。

曲線上限@指令速度は、同じ指令速度で曲線から読んだ上限トルクです。余裕率の分子に使います。

定常評価点は、定常評価区間の平均速度と定常必要トルクです。選定で一番自然に読む点です。

終端評価点は、計算終了時の速度と必要トルクです。加速が終わっていない条件や脱調時の参考点です。

グラフでは「強調する代表点」で、どの点を主表示するかを選べます。自動では、定常が成立していれば定常評価点、成立していなければ終端評価点を選びます。

17. 定常統計の取り方

平均値、RMS、p-pは、グラフ表示用に間引いた点だけで計算すると、サンプル数やエイリアシングの影響を受けます。

このシミュレータでは、主要な定常統計は積分ループ内の全刻みから集計します。表示サンプル数はグラフの滑らかさには効きますが、主要な定常評価値には効きにくい構造です。

時間応答の見え方を重視する場合は、サンプル数を増やすとリップルや移動平均が読みやすくなります。

18. 計算刻みの決め方

時間刻みは固定ではなく、入力条件から決めます。STEP間隔、巻線時定数、機械系の概算周期のうち、厳しいものに合わせます。

\[ \tau_e=\frac{L}{R} \]
\[ \Delta t \le \frac{T_{step}}{N_{pulse}} \]
\[ \Delta t \le \frac{\tau_e}{N_e} \]

高速、高マイクロステップ、低インダクタンス、短時間の振動を見る条件では、より細かい刻みが必要になります。

19. PWM/PPSの意味

PWM/PPS は、1つのSTEP入力パルスの間に、チョッパ電流制御が何周期動けるかを示します。

\[ \mathrm{PWM/PPS}=\frac{f_{chopper}}{f_{input}} \]

この値が小さいと、電流制御が目標電流を作り切る前に次のマイクロステップへ進みます。チョッパ周波数はIC、モード、外付け部品、レジスタ設定で変わるため、自動値は比較用の代表値です。

20. 熱と損失

モータ巻線の銅損と、ドライバICのオン抵抗損を簡易計算します。

\[ P_{cu}=I_{rms}^2R_{phase}\cdot2 \]
\[ P_{driver}=I_{rms}^2R_{DS(on),total}\cdot2 \]
\[ T_j\approx T_{ambient}+P_{driver}\theta_{JA} \]

実機の温度は基板銅箔面積、ヒートシンク、風量、周囲温度、パッケージ条件で大きく変わります。この値はIC比較と危険域の検出用です。

21. 現実寄りにするための工夫

理想的な「常に指令電流どおり流れるモータ」にはしていません。巻線L/R、逆起電力、電源電圧制限、decayモード、ディテントトルク、磁気飽和、粘性項、定常統計を入れています。

その結果、高速で電流が遅れる、電源電圧を上げると高速域が改善する、低インダクタンスモータが高速に強い、負荷角が増えると同期余裕が減る、といった傾向を確認できます。

22. このモデルの前提条件

対象は2相ハイブリッドステッピングモータのオープンループ駆動です。エンコーダ閉ループ制御、実機共振谷、細かなPWMリップル、電源配線インダクタンス、バックラッシ、温度による巻線抵抗変化は簡略化しています。

脱調後の波形は、物理の傾向を見るための参考表示です。実機の脱調後挙動はドライバ保護、負荷機構、摩擦、電源、制御設定に強く依存します。

よくある勘違いと落とし穴

設計レビューで毎回出る話

A. √2が出てくる3つの別物

ステッピングモータ周りの√2は少なくとも3種類あり、混ぜると数値が4割ずれます。(1) 保持トルクとトルク定数: カタログ保持トルクは2相励磁(各相 Irated、電流ベクトル √2·Irated)の値です。正弦波マイクロステップの電流ベクトルは振幅 I なので、同じ電流設定で出せる最大トルクは保持トルクの約70.7%です。

\[ K_t = \frac{T_{hold}}{\sqrt{2}\,I_{rated}}, \qquad T_{max}^{sine} = \frac{T_{hold}}{\sqrt{2}} \approx 0.707\,T_{hold} \]

(2) 発熱のRMS: 正弦波駆動の相電流RMSは Iset/√2、フルステップ2相励磁は常時 ±Iset なので RMS = Iset です。つまり同じ電流設定なら銅損はフルステップが2倍。逆に同じトルクで比べると、マイクロステップ側は電流を√2倍に上げる必要があり、銅損はちょうど同じになります。

\[ I_{rms}^{sine} = \frac{I_{set}}{\sqrt{2}}, \qquad I_{rms}^{full} = I_{set} \]

(3) 電流設定値の定義: ドライバのVrefやレジスタ設定がピーク電流定義かRMS定義かはICごとに違います(電流制限欄の?参照)。データシートのトルク特性がどの電流定義で測られたかも併せて確認が必要です。

B. STEP入力PPSとフルステップ相当PPS

同じ回転数でも、STEP入力周波数はマイクロステップ分割数に比例して増えます。カタログの速度-トルク曲線の横軸ppsはほぼ例外なくフルステップ条件なので、マイクロステップ駆動のSTEP周波数をそのまま横軸に入れると、分割数倍だけ速い場所の(実際より低い)トルクを読んでしまいます

\[ f_{full} = \frac{f_{in}}{M} \]

本ツールはこの換算を「PPS基準」として明示しています。

C. マイクロステップは分解能であって精度ではない

1マイクロステップの指令に対する復元トルクは分割数とともに急減します。1/16分割で最大トルクの約10%、1/256分割で約0.6%です。

\[ T_{inc} = T_{max}\sin\frac{90^\circ}{M} \]

摩擦やディテントトルクがこれを上回る領域では、指令を進めてもロータは動かず、数マイクロステップ分たまってからまとめて跳びます。停止位置精度はカタログでフルステップ基準±5%程度(無負荷・非累積)で、分割数を増やしても向上しません。マイクロステップの実利は位置分解能ではなく、トルクリップル低減による低速振動・共振の緩和です。

D. トルクの名前が4つある

保持トルクは励磁静止時に外力で動かすのに要るトルク、ディテントトルクは無励磁時の磁気的な引っかかり(保持トルクの数%)、脱出トルク(pull-out)はある速度で同期を維持できる限界、引き込みトルク(pull-in)はその速度から自起動できる限界です。pull-in曲線は負荷慣性に依存するため、カタログ値は特定の慣性条件での測定です。読み込む曲線がどれなのか、測定条件(電圧・電流・励磁方式・慣性)と合わせて確認します。本ツールが扱うのは主にpull-out側です。

E. RMS・平均・ピークの使い分け

用途で見る統計量が違います。発熱はDC成分込みのRMS(巻線銅損・ドライバ導通損は I²R)。同期維持は瞬時の負荷角とピーク必要トルク。選定余裕は定常評価区間の平均必要トルク。本ツールの速度・負荷角・誤差系列の「リップルRMS」はDC成分を除いた振動の大きさで、発熱計算には使えません。発熱は「相電流RMS」の指標を見ます。

F. モータの「定格電圧」は使わない

カタログの定格電圧 R×Irated は定電圧駆動時代の名残で、チョッパ駆動では実質意味を持ちません。電源電圧VMは定格電圧よりはるかに高く(数倍〜十数倍)し、電流はドライバの電流制限で守ります。VMが高いほど電流の立ち上がりが速くなり高速域のトルクが改善します。

\[ \frac{dI}{dt} = \frac{V_M - RI - E_{bemf}}{L} \]

逆にVMを「定格電圧」に合わせると高速トルクがほぼ出ません。

G. 単位の罠

慣性の g·cm² と kg·m² は7桁ずれるので指数ミスが最も多い箇所です。GD²表記との換算、トルクの単位系も要注意です。

\[ 1\ \mathrm{g{\cdot}cm^2} = 1\times 10^{-7}\ \mathrm{kg{\cdot}m^2}, \qquad J = \frac{GD^2}{4} \]
\[ 1\ \mathrm{kgf{\cdot}cm} = 0.0981\ \mathrm{N{\cdot}m}, \qquad 1\ \mathrm{oz{\cdot}in} \approx 7.06\times 10^{-3}\ \mathrm{N{\cdot}m} \]

曲線横軸の kpulse/spps の1000倍も既出の事故ポイントで、本ツールは読み込み時に換算しますがCSVに単位がない場合は推定です。

H. ギア換算は慣性だけ2乗

減速比 i のとき、モータ軸から見た換算は次の通りです。

\[ T_{motor} = \frac{T_{mech}}{i\,\eta_G}, \qquad \omega_{motor} = i\,\omega_{mech}, \qquad J_{motor} = \frac{J_{mech}}{i^2} \]

慣性だけ2乗で効くため、慣性比が大きすぎる系は少しの減速で大きく改善します。逆に「トルクが足りないからギアを入れた」ときに慣性比とSTEP周波数(×i)が同時に変わることを見落としがちです。速度の基準軸を「機構軸」にすると、負荷の動きを固定したまま i を振って余裕の変化を見られます。

I. 加速トルクの式は流儀がある

加速時間指定の式は台形プロファイルの定加速区間、自起動のf²式は「1パルス周期で速度fまで立ち上がる」と見る流儀です。

\[ T_a = J\alpha \quad\text{または}\quad T_a = J\,\theta_s f^2 \]

θsはrad、fはフルステップ相当PPS[Hz]です。文献により係数1/2が付く版があります。本ツールは係数なしの標準形(保守側)です。メーカー計算例と数字を突き合わせるときは、どちらの式・どの単位(θsがdegかradか)かを先に確認します。

J. 脱調は「トルク不足」だけで起きない

静的なトルク余裕が2倍あっても、中速域の共振(数百pps帯)、急加減速での負荷角の振動、電流追従の遅れ、電源電圧の瞬間的な低下で同期は外れます。逆に一度脱調すると、トルクを上げても同期は自動復帰しません(位置情報が失われるため再原点出しが必要)。本ツールの追従誤差・負荷角の時間波形は、この「余裕はあるのに危ない」条件を見るためのものです。

主要な式まとめ

速度とパルス

\[ N_s = \frac{360}{\theta_{step}} \]
\[ f_{in} = \frac{n_{cmd} N_s M}{60}, \qquad f_{full} = \frac{f_{in}}{M} \]
\[ n = \frac{60 f_{full}}{N_s} \]

指令電流と巻線

\[ \phi = \frac{\pi}{2M} N_{pulse}, \qquad I_{A,ref}=I_{cmd}\cos\phi, \qquad I_{B,ref}=I_{cmd}\sin\phi \]
\[ K_t = \frac{T_{hold}}{\sqrt{2} I_{rated}}, \qquad K_e \approx K_t \]
\[ L\frac{dI_A}{dt}=V_A-RI_A-E_A, \qquad L\frac{dI_B}{dt}=V_B-RI_B-E_B \]
\[ E_A=-K_e\omega\sin\theta_e, \qquad E_B=K_e\omega\cos\theta_e \]

トルクと機械系

\[ \theta_e=N_r\theta, \qquad I_q=-I_A\sin\theta_e+I_B\cos\theta_e \]
\[ T_{em}=K_t I_q S_{sat}, \qquad T_{detent}=-T_d\sin(4\theta_e) \]
\[ J_{total}\frac{d\omega}{dt}=T_{motor}-T_{load,motor}-B_{total}\omega \]
\[ J_{total}=J_{rotor}+\frac{J_{load,out}}{G^2}, \qquad T_{load,motor}=\frac{T_{load,out}}{G\eta} \]

負荷計算

\[ F=F_A+m g(\sin\alpha+\mu\cos\alpha) \]
\[ T_{belt}=\frac{F D}{2\eta}, \qquad J_{linear}=m\left(\frac{D}{2}\right)^2, \qquad n=\frac{60v}{\pi D} \]
\[ T_{screw}=\frac{F P_B}{2\pi\eta}+\frac{\mu_0 F_0 P_B}{2\pi}, \qquad J_{linear}=m\left(\frac{P_B}{2\pi}\right)^2 \]

必要トルク、曲線、熱

\[ T_a=J_{total}\alpha, \qquad T_M=(T_L+T_a)S_f \]
\[ x_{curve}=f_{full} \;\text{or}\; f_{in} \;\text{or}\; n_{cmd} \]
\[ T_{margin}=\frac{T_{available}(x_{curve})}{T_{required}} \]
\[ P_{cu}=I_{rms}^2 R_{phase}\cdot2, \qquad P_{driver}=I_{rms}^2R_{DS(on),total}\cdot2 \]
\[ T_j \approx T_{ambient}+P_{driver}\theta_{JA} \]

判断の順番

  1. 目標rpmとSTEP入力PPSの換算が合っているか見る。
  2. 速度-トルク曲線のPPS基準が合っているか見る。
  3. 強調中の代表点が曲線上限より十分下にあるか見る。
  4. 追従誤差と負荷角が大きくなりすぎていないか見る。
  5. 相電流err、逆起電力余裕、PWM/PPSから高速側の限界を分ける。
  6. 最後に熱、電流、電圧、負荷慣性を見て実装上の余裕を確認する。

使い分け

負荷計算タブは、必要トルクと慣性の見積もりを作るための入口です。

シミュレータ画面は、その条件で電流、トルク、速度、負荷角が時間的にどう振る舞うかを見る場所です。

代表値タブは、プリセット同士の比較と、どの値が代表化されているかを確認する場所です。

代表値表

クリックで並び替え

色付きセルは推定・代表化・内部仮定を含む値です。モータ表の「推定/代表項目」と「根拠/注意」に、どの値が推定なのかを分けて書いています。ドライバの「実用[A]」「PWM/chopper」「θJA」は実装条件に強く依存する比較用の目安です。ヘッダをクリックすると昇順/降順で並び替えられます。

モータドライバ代表値

メーカー IC 発表年(目安) VM [V] Imax [A] 実用 [A] µstep PWM/chopper Rds [ohm] θJA 推定/代表項目 データ元/注意

モータ代表値

型番 step [deg] I [A] R [ohm] L [mH] T hold [N m] Jr [x10^-4] detent [N m] データ状態 推定/代表項目 根拠/注意